現代版養生訓「ときめきこそ生命力を高める原動力」“人間をまるごとにとらえる医学を目指して” ■Sweetpotato Interview vol.3

帯津 良一(おびつ りょういち)先生

さつまいも大学は「おいしい・たのしい・からだにいい」情報サイトを目指しています。

みなさまは、この『からだにいい』とはどういうこと?だとお考えでしょうか。

わが国におけるホリスティック医学の第一人者である帯津良一先生(帯津三敬病院名誉院長)にお話しを伺いました。

1936年  埼玉県に生まれる 1961年  東京大学医学部卒業 東京大学病院第三外科、共立蒲原総合病院外科、都立駒込病院外科を経て 2000年  『楊名時太極拳21世紀養生塾』を設立、塾頭 2001年  帯津三敬病院、名誉院長 その他、日本ホリスティック医学協会会長、楊名時太極拳21世紀養生塾主宰、日本代替・相補・伝統医療連合会議理事、日本ホメオパシー医学会理事長、サトルエネルギー学会会長、日本人体科学会理事、北京中医薬大学客員教授、北戴河気功康復医院名誉院長、世界医学気功学会副主席、埼玉医科大学総合医療センター非常勤講師、他

主な著書として、『美味しい、おかゆ』(河出書房新社)、『気功的人間になりませんか』(風雲舎)、『がんになったときに真っ先に読む本』(草思社)、『帯津流がんと向きあう養生法』(NHK出版)、『あるがままに生き、死を見つめる7つの教え』(講談社)、『身近な人がガンになったとき何をなすべきか』(講談社)、『ガンを治す大辞典』(二見書房)など多数。

さつまいもにはどんな想い出がありますでしょうか?

私は川越で生まれて、川越で育ちました。さつまいもの想い出というと、やっぱり戦時中ですね。私がちょうど小学校4年生の時が終戦です。当時の夕食風景を思い出すと、父親と母親とおばさんと私と弟が丸いちゃぶ台を囲んで食べるんですけど、お皿の上に蒸かしたさつまいもが一個ずつ。お腹は空いていたけど、そんなに沈んだ雰囲気じゃなくて、ワイワイ喋りながら食べました。

この『美味しい、おかゆ』のさつまいものおかゆも想い出の味でしょうか?

いえいえとんでもない(笑)戦時中と終戦後の1~2年、お米なんかそう簡単に食べられなかったんですよ。真っ白なおかゆは王様の食卓。今の若い方は想像できないくらい食糧事情が悪かったのです。

おかゆの本当の旨さに開眼したのは中国においてです。西洋医学と中国医学の結合をこころざしての初めての訪中が1980年9月でした。本場だけあって、中国のおかゆはとても種類が多いのです。そして、一流ホテルのおかゆがとにかく旨い。おかゆの旨さだけでホテルの等級を決めることができそうなくらいです。

≪レシピ紹介≫

さつまいもと豆乳のおかゆ

さつまいもの自然な甘みと豆乳のコクで やさしい味のおかゆです。

≪作り方≫

①さつまいもは小さめの乱切りにし、20分ほど水にさらし、水けをきる。米はといでざるに上げ、20分ほどおいて水けをきる。

②鍋に①と水を入れて蓋をし、強火にかける。しっかり煮立ったら弱火にし、吹きこぼれないように蓋を少しずらして40〜50分炊く。

③米がふっくらやわらかくなって 全体がなじめば、火を止めて豆乳を加え、蓋をして10分蒸らす。

*ゆずこしょうを添え、少しずつのせてどうぞ、豆乳の匂いが気にならなくなります。

新装版 「美味しい、おかゆ(P.34)」(ISBN978-4-309-28853-6)河出書房新社2020/12/10

年齢のせいか、最近おかゆを食べる機会が増えてきたような気がします。別に身体のことを考えてという殊勝な気持ちからではなく、あくまでも身体の欲求に従っただけのことです。

「おかゆを作ること自体が養生」と本にもございましたが…。

養生とは、生命を正しく養うことです。

これまでの養生は身体を労わって病を未然に防ぎ、天寿を全うするといった、どちらかといえば消極的な守りの養生でしたが、これからは、内なるいのちのエネルギーを日々勝ち取って行き、死ぬ日を最高に、その勢いをもって死後の世界に突入するといった、より積極的な攻めの養生の時代です。

おかゆを作ることも立派な養生です。

究極の味を求めて日々新たに、日々向上ですから、これ以上の攻めの養生はありません。その上に、そのおいしさで食べる人にときめきを与える仕事ですから、当然のことながら作る人もときめきます。食べる人以上といってもよいでしょう。ときめきこそ生命力を高める原動力なのです。

お医者さんから「ときめきこそ生命力を高める原動力」と伺うと、もっと詳しくお聞きしたくなります。

私は「人間をまるごとにとらえる」ホリスティック医学に取り組んできました。

世界のホリスティック医学の基を作ったのは、フランスの哲学者たちなんです。

ガストン・バシュラール、ジョルジュ・カンギレム、ミッシェル・フーコー、アンリ・ベルクソン。

ベルクソンは分析的な西洋医学に異議を唱えた人です。もっと人間をまるごと見ようじゃないかと。カンギレムは病気というのは臓器の問題じゃなく、「生の歩調が脅かされること」これが病気だと書いています。

「生の歩調」というのは、たとえばベルクソンの言う「生命の躍動」と思ってもいいし、あるいは「人間の尊厳」と思ってもいいのです。

日本では戦争直前の1941年に大阪大学がフランス哲学の澤瀉久敬先生を招聘して「医学哲学概論」という講座をつくっていたのです。太平洋戦争が始まって、「お国のために戦っているのに、大阪大学は医学部で哲学なんて余計なことを教えている」と非難もされたそうです。それでも澤瀉先生は退かなかった。

学生たちに「哲学を身につけた、よい医者になって、お国に恩返しをすればいいから、気にするな」と言ったというんだから、気骨のある人だなと思いますよ。

ホリスティック医学は1960年代、70年代にアメリカ西海岸で興ったホリスティック運動からスタートし、ホリスティック医学協会もアンドルー・トーマス・ワイル(Andrew Thomas Weil)氏の本を基に作られているわけですが、それに先立つフランスのホリスティック医学の哲学を把握するといいと思います。

ベルクソンは「生命の躍動が起こると、喜びに包まれる。その喜びはただの快楽ではない」と書いています。そして「必ずそこには創造が伴う」と。じゃあ、何を創造するのかというと、「自己の力で自己を創造するのである」と書いてある。喜びと自己実現といったら、やはり生命を生命たらしめている基本ですよね。

「ときめきこそ生命力を高める原動力」「ときめきが自然治癒力や免疫力を高める」ということは、ベルクソンの「創造を伴う」というところに鍵があると思っています。

生命力を高めるにはどうしたらいいか、生命たらしめているのは内なる衝動力、こう突き上げる力、それが「ときめき」であると思っています。

もともと外科が専門でいらっしゃった帯津先生はなぜホリスティック医学に進まれたのでしょうか?

私は食道がんの手術を専門にしていました。食道がんの手術といえば、かつては術後1ヶ月以内に合併症で亡くなる ケースが非常に多い悲惨なものでしたが、昭和50年頃には比較的安全な手術になっていました。それに当時私がいた駒込病院は日本一の設備が整った病院でしたから、本当に安全な手術を行っていたと思います。

ところが安全な手術をいくら完璧に行っても、がんの再発率がかつてと変わらないのです。それがきっかけで、西洋医学に限界を感じるようになりました。西洋医学は部分ばかりを見て、繋がりを見落としているのではないか――そう思って、まずは繋がりを見る中国医学を治療に取り入れるため、中国に渡りました。

北京と上海の主な病院をまわって意気込んで帰国したのですが、医療者も患者さんもなかなか新しい医学に理解を示してくれません。駒込病院には最先端医療を求める患者さんたちが来ていたわけですから、気功などさせてもびっくりされて(笑)しまいました。

それから地元である埼玉県川越市に帯津三敬病院をつくられたのですね。

帯津三敬病院をはじめたばかりの頃は、西洋医学と中国医学を結合したがん治療を行い、西洋医学とつながりを見る中国医学をあわせているのだから、これで人間まるごとだと思っていたのです。ですが、それだけでは心の問題が見落とされてしまっていることに気がつきました。そこで心の専門チームを作りました。

人間をボディ(body)・マインド(mind)・スピリット(spirit)の3つに分けて、ボディには西洋医学、マインドにはいろいろな心理療法、そしてスピリットにはいろいろな代替療法で対処するようにしてみたのです。しかし、それでもまだまだでした。色々な治療法を集めても、それだけではホリスティックにはなりませんでした。

南アフリカのJ.C.スマッツという思想家は「全体というのは部分の総和以上のものである。それゆえに、全体が重要なのである」と語っています。その通りです。やはり全体を捉える方法論を持つことが大切なのです。

そうやって日本を代表するホリスティック医学の病院になられたのですね。

一生懸命にやってきましたが、まだまだですよ。ホリスティック医学をやりたいからと私の病院に就職してくる医療スタッフがけっこういますよ。ところが、中には誤解している人がいて、抗がん剤を使うでしょ。そうすると「ホリスティックじゃない」と幻滅して辞めていく人もいます。今の選択肢の中では、抗がん剤をやらなければいけない患者さんもいるし、手術だってやらなければいけない場合もありますからね。もちろん、大きく切ったり、強い薬を使うような侵襲が大きい治療法や人間の尊厳を引き裂くような治療法は、どんどん無くしていかないといけないのです。京都大学の山中伸弥先生の再生医療などは、侵襲がそんなに大きくないから、これからさらに研究を進めて、実際の臨床に応用できればいいと思っています。

緩和治療にも誤解があります。緩和というのは、治療法がなくなったからから、とおこなうものではありません。もともと全ての医療は広い意味での緩和なのです。人間をまるごと見て・診て・看て、寄り添って、その人を癒していくわけですからね。

これからの医療はホリスティック医学に向っていくのでしょうか。

代替医療・統合医学へと向かう世界の流れができていて、もう逆戻りすることはないと私は思います。患者さんたちがホリスティックを求めているし、ホリスティックを理解する世代の人たちも増えてきましたからね。それに対して医師会や医学会には保守的な面も見られましたが、それも少しずつ変わってきているように感じています。

病院のスタッフには「患者さんと同じ目線に立つように心がけて」と繰り返し伝えています。哲学者の中村雄二郎さんは「癒しをする者はすべからくヴァルネラブル(vulnerable)でなければならない」と書いています。相手の痛みを理解するためには相手と同じ目線に立たなければならないということですね。患者さんを上から見下ろして解った気になっているようではだめなのです。

そして、病院の「場」のエネルギーを高められる人になってくださいとも伝えています。 どんなにホリスティック医学の方法論を確立しても、それを担う人間の志や覚悟がなければ、結局は良い「場」を作ることはできません。患者さんがその場に身を置いただけで病気が良くなってしまう、そんな氣の流れる病院を作るためには、スタッフ全員の志と、患者さんに対して決して諦めない覚悟が必要なのです。

さつまいも大学は「おいしい・たのしい・からだにいい」情報サイトを目指しています。どうすれば「からだにいい、さつまいも大学」になることができるでしょうか。

さつまいもは美味しいし、食べればお通じが良くなることも分かっていますからね。「なぜ『粗食』が体にいいのか (知的生きかた文庫)」という本も書きましたが、赤ちゃんが口にする順番を考えればいいのです。水・米・イモ・野菜ですよね。

さつまいもを作る人と食べる人の垣根が下がって、互いにつながり合えたら、それこそヴァルネラブルですよ。偏食も絶対にいけないということではありません。貝原益軒の食養生法は「好けるものを少し食べよ」と、好きなものを飽食してはいけないよ、ということなのです。

医療現場の経験のなかで「いい場に身を置くことの出来た人ほどよく治る」という実感があります。

さつまいも大学が「いい場」になったら、みんなよろこんで見るでしょうね(笑)。

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