■Sweetpotato Interview vol.1 ドゥエル・ベーリ先生とさつまいも愛

さつまいも大学開校にあたり、「川越いも友」の会 会長、「サツマイモまんが資料館」の館長であるドゥエル・ベーリ先生に、先生と川越やさつまいもとの出会いなどをお聞きしました。先生とさつまいもとの不思議なご縁を、先生ご自身の半生と重ね合わせ、時に懐かしみ、時にユーモアを交え、過去・現在・未来へととても興味深いインタビューとなりました。(※なお、インタビューは 2021年12月8日リモートによる)

■ドゥエル・ベーリ(Barry Duell)先生 / さつまいも文化研究家

・1949年生まれ。アメリカ・オレゴン州出身。
・1974年より、川越市に在住。
・1981年より、川越いもの研究をはじめ、国際的なイモ類学会にも参加。
・1986年より「川越いも友の会」会長を務める。
・著書に『アメリカ・サツマイモ事情』(1999年)などがある。
・東京国際大学名誉教授
・川越いも友の会会長
・川越・セーレ厶親善協会会長
・日本聖公会川越基督教会資料保管委員会会長
・小江戸川越観光親善大使

2019年4月の川越ペンクラブ総会にて(撮影:高柳 理)

—ドゥエル先生と川越とのご縁はどのように始まったのでしょうか?

その質問にお答えするには私のラブストーリーをお話しなければなりませんね(笑)。

自然豊かで素朴な街、オレゴン州で育った私の父は、終戦後、進駐軍で日本赤十字関係の仕事をしていました。フレンドリーな父には日本人の友達もたくさんいて、帰国後も交流があったのです。

そんな父の影響で私も日本に『いつか行ってみたい』とウィラメット大学で日本語を学び、23歳のとき、姉妹校だった国際商科大学(現在の東京国際大学)に3か月間の短期留学をしました。

ホームステイ先でおやつに出してくれたのがさつまいもでした。おいしいさつまいもを好きになりましたが、そのさつまいもを出してくれたホームステイ先の娘さんをもっと好きになりました。私の人生を決める恋をしたのです。

ご家族とドゥエル先生(1991年当時・撮影:小池 汪)

—その恋が見事に叶って国際結婚されたのですね。
新婚生活を過ごした当時の川越はどんな街だったのでしょうか?

はい、もう半世紀近くも前になりますが、今とはずいぶんと違いましたね。

いまでこそ『蔵の街』として観光客で賑わっていますが、私が川越に住み始めた70年代当時は、蔵はボロボロで夕方になると閑散としたシャッター通りでしたよ。

観光地というイメージもあまりなかったと思います。

—さつまいもとの出会いはどのようなものだったのでしょうか。

そのころは県外で「川越に住んでいます」というと、「ああ、あのさつまいもの~」と言われることが多かったのですが、どちらかというと、ちょっとバカにした、というかあまりいいイメージがないことが伝わってきました。「イモなんて自慢にもならないよ」と言われるほど、地元でも“恥ずかしいもの”のように思われていました。

どうしてだろう、こんなおいしいものを、とさつまいもについて興味をもって調べ始めました。さつまいもはいつごろから日本で栽培されていて、なぜ川越がさつまいもで有名だったのか、知りたいこと調べたいことが山のようにありました。

ある日、川越市立図書館でさつまいもに関するよい研究論文に巡り合いました。著者は県立松山高校教師の1)井上先生でした。お会いしてすぐに意気投合しました。

当時の私は川越になかなか溶け込むことができませんでした。英会話の先生をすれば生徒さんとはすぐに仲良くなりましたが、地域との関わり合いのきっかけがなかったのです。

井上先生は日本で出会えた最初のいも友人であり、長く続く同志との出会いでした。

1982年には福原公民館で市役所の2)山田さんが主催されたさつまいもの講座があり、すぐ申し込みました。川越のさつまいも生産や歴史などを学び、2年後、受講生などの有志40名から「川越いも友の会」という市民活動が生まれました。

そうやって、さつまいもを大切に思う住民の一人としていろんな活動に参加していきました。

そのころからたくさんの取材を受けるようになりました。

普通の外国人が取り組むのは柔道や生け花などと相場がきまっていましたからね。

「え?外国人がさつまいもにハマってる?Why?なぜ?(笑)」

また市内には、いも焼酎のカクテルによる食前酒から、いもソバ、いもアイスのデザートまで、いもづくしの素晴らしいコース料理「いも懐石」が生まれました。「川越いも友の会」の協力でいも膳の3)神山さんはサツマイモ博物館を設立されたり、川越さつまいも文化振興の功労者のおひとりです。

1)井上 浩先生(日本いも類研究会会長)本サイトにてインタビュー予定

2)山田英次先生(サツマイモまんが資料館 館長)本サイトにてインタビュー予定

3)神山正久社長(いも膳https://www.kawagoe.com/imozen/社長)本サイトにてインタビュー予定

サツマイモ資料館(1989~2008)

—海外とのさつまいも交流はどのようなものだったですか。

1985年より国際熱帯いも研究会に参加、発表を行いました。1990年には、川越いも友の会が「中国サツマイモ調査団」を派遣しましたし、また、91年アメリカでの「国際サツマイモシンポジウム」では、日本のいも文化に関する研究報告に加え、いも料理を披露し、大好評でした。

世界中でさつまいもは栽培され食べられているのですが、海外の調理方法はいたってシンプル、単純なのです。

海外の方からは日本のさつまいも研究が大変進んでいることを当時ずいぶんと褒められました。さつまいもを育てる研究、栄養素の分析などの研究も優れていました。

現在は論文数などでも中国が日本を追い越したと聞きました。さつまいもに関する研究費や研究者自体の数が減っていることが不安の種ですね。

—なぜ日本ではさつまいも料理やお菓子に工夫を凝らしたのでしょうか。

さつまいもに対する研究心とクラフトマンシップ、職人技を発揮する国民性なのだと思います。

ただ煮たり蒸かしたりするだけでなく、いろいろな手を加えるということへの探求心のようなもののレベルが高いのです。私はそう思います。

みんな忙しい毎日、コンビニエンス、便利なことはよいことですが、ひと手間かけられるのが日本人の素晴らしさですから、そんな気質は大切にしていくべきだと思います。

さつまいもだけでなく、地元の野菜や食材をつかって自分で調理してみましょう。料理は楽しいですよ。たまにはちょっと多く作ったらご近所や職場の人に分けてあげて、そんな物々交換もこれからの豊かな生き方の一つなのではないでしょうか。

—江戸時代にもさつまいもブームがあったというのは本当ですか。

はい本当です。手軽に食べられる当時人気のファストフードだったんです。天保の諸国名物番付『天保時代名物競』にも「さつまいもといえば川越」と記されたほどでした。そんな江戸時代のナンバーワンブランドの川越いもでしたが、明治、大正、昭和と時代は移り変わり第二次大戦中は食料確保第一の立場から、とにかく量を多く、ということで味の悪いさつまいもが市中に出回りました。戦中戦後を生きた方々は、さつまいもイコール他に食べるものがないからイヤイヤ食べたもの、というマイナスの印象が強く残っていました。ですから今の美味しくて人気のあるさつまいもブームは江戸時代に戻ったともいえるのです。

チェコ人作家(「シブヤで目覚めて」という川越も登場する小説)アンナ・ツィマ夫妻が川越サツマイモまんが資料館を訪問(2020年7月・撮影:山田英次)

—未来を生きる子どもたちにメッセージをお願いします。

ずっと教師をしてきましたので、子どもたちの健やかな毎日を願っています。

大切なのは「楽しさ」「克己心」「好奇心」ですね。

まず伝えたいのは、「自分にとっての楽しさは何か」をみんなに見つけてほしいですね。

学校を卒業した後の方が長い人生なのですから、自分が何をしたいかよく感じて、よく考えて、楽しくないとずっとは続きませんからね。さつまいもは私の人生を豊かにしてくれましたよ。お金にはならなかったんですが(笑)、楽しいからずっと続いていますよ。

そして楽しさと同時にセルフコントロール、日本語で克己心ですね。これも同じくらい大切です。楽しさだけはないですし、克己心だけもないのです。その両方が大切です。

そして好奇心、未知なるものへのチャレンジ精神です。

私がオレゴンに住んでいた時は、田舎だし誇りも感じなかったし、あまりよい場所とも思わなかったのです。しかし、日本に来て、オレゴンを離れて、オレゴンの素晴らしさを知りました。若いみなさんも一度、今いる場所を離れることをお勧めします。

私のように50年も出なくていいです(笑)。半年、1ケ月でもいいです。日本の外に出て、日本を川越を見つめてみてください。多分、大きな発見と本当の郷土愛をもつことができます。

—最後にこれからの活動についてひとことお願いします。

さつまいもの振興には拠点づくりがとても大切です。

1989年に「いも膳」の敷地内に私設資料館としてサツマイモ資料館が開設されました。

入館者は年に3万人以上で小中学生から生産農家さん、お料理の専門家も訪れました。

2008年に惜しまれながら閉館した後は、蔵造り街並みの中心に紋蔵庵蔵の街店の2階、サツマイモまんが資料館(https://sweetpotato.info)が2019年12月にオープンしました。

山田(英次)さんと私が館長をしています。山田さんの描いたイラスト漫画で、わかりやすく川越いもの歴史や文化、さつまいもの世界を伝えていますので、どうぞみなさん遊びにきてください。

「さつまいも大学サイト」も新しい拠点の一つに育ってもらいたいですね。

わたしはずっと大学で働いてきたから思うのですが、名称は大学でも寺子屋くらいのつもりで堅苦しくなく、同じ目線の高さでそれぞれが情報を持ち寄り合える雰囲気のサイトを目指してください。

応援していますよ。さつまいもは素晴らしいものですからね。

サツマイモまんが資料館

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