鹿児島県がさつまいも産地である理由!どうして鹿児島県ではさつまいも生産が盛んなの?
- 2022/4/7
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さつまいも生産量が日本一の鹿児島県。
昨今、さつまいもの生産量が全国的に減少していますが、現在も不動の1位を誇ります。そもそも、どうして鹿児島県が大産地になったのでしょうか?
※記事内の図表について:さつまいもは、農林水産省では「かんしょ」と称しており、作物統計などでも「かんしょ」と表記されています。
鹿児島県では米が作れなかった!?
現在では、「ヒノヒカリ」「はなさつま」などの米の銘柄を持つ鹿児島県ですが、姶良(あいら)火山からの火砕流でできたシラス台地は、水はけの良すぎる土地で、かつては稲作ができない土地でした。
1955年以降、灌漑用水の設備によって、さまざまな農作物の栽培が可能になり、稲作も行われるようになりましたが、それまでは栽培可能な作物が本当に限られていました。
シラス台地は酸性で有機物が少なくやせていて、肥沃な土壌を必要とする作物には向きません。鹿児島県の気候は温暖で雨が多いものの、干ばつも少なからず起こり、作物にとっては厳しい環境と言えます。
ところが、さつまいもは下記のような優れた特性を持ちます。
・雨や風に負けない
・暑さや日照りにも負けない
・肥料も多くを必要としない
・どこでも誰でも楽に作ることができる
さつまいもは温暖な気候、水はけの良い土壌を好み、ミネラルを豊富に含む火山灰土壌は栽培に適しています。そのため、米が取れない薩摩の国で主食として栽培されるようになったのです。
茨城県・千葉県でも、火山灰が堆積した関東ローム層がありますが、シラス台地との違いは粘土分の多い粘り気の強い土壌であること。
関東ローム層は、高台や台地を構成していることから農業用水の確保が難しく、稲作に向かないことから畑作地帯となっています。享保の飢饉のときに薩摩からさつまいもが持ち込まれ、粘土質が少なく水はけが良い、さらさらした土壌のところがさつまいもの産地となっています。
<令和2年度の主産県収穫量>
作付面積(ha) | 生産量(トン) | |
鹿児島県 | 10,900 | 214,700 |
茨城県 | 7,000 | 182,000 |
千葉県 | 3,940 | 90,200 |
宮崎県 | 2,990 | 69,100 |
徳島県 | 1,090 | 27,100 |
熊本県 | 824 | 17,300 |
令和2年度版いも・でん粉に関する資料「1 かんしょの生産等・生産状況」より作成
引用:令和2年産かんしょの作付面積及び収穫量 令和3年6月30日
鹿児島県のさつまいも用途の特徴
「さつまいも」というと、生食用やいも焼酎用などのイメージが強いと思います。さつまいもは、生食用・アルコール用のほかに、加工食品用・でんぷん用・飼料用などの用途があります。
鹿児島県では、さつまいもを原料とするでんぷん産業や焼酎産業、加工用といった工業用の用途が多くなっています。とくに焼酎用は需要が拡大したため、平成に入ってから生産量が増加しています。
さらに、さつまいものツルは栄養が豊富で、畜産用の飼料としても使われています。
現在のでんぷん原料用のさつまいものほとんどが鹿児島県産ですが、安価なコーンスターチの増加に伴い減少してきました。減少傾向ではありますが、近年、品質の良いさつまいもでんぷんが作られるようになり、利用用途も広がっているようです。
引用:令和2年産かんしょの作付面積及び収穫量 令和3年6月30日
特定野菜対象産地?
日本では、野菜のうち特に消費量の多いものを「指定野菜」、指定野菜に準ずる地域農業振興上重要なものを「特定野菜」として定めることで、野菜の生産出荷を安定させています。
さつまいも(かんしょ)は、35品目ある特定野菜のうちの1品目で、国民生活上重要な野菜のひとつとされています。
2021年4月時点での特定野菜対象産地は15箇所あり、鹿児島県では3つの地域が指定されています。
鹿児島県は、農業産出額が全国2位で農業は基幹産業です。豚や肉用牛(黒毛和種)を中心とした畜産は、農業産出額の66%を占めています。畜産以外では米、茶に続く3番手の産出額となるのがさつまいもです。
夏秋期には、毎年のように暴風雨を伴う台風に見舞われるほか、夏期には干ばつ害を受けることもよくある中で、基幹産業としての農業生産を維持していくためにもさつまいもは重要な品目ということがわかります。
主要参考文献
「サツマイモの変遷――野生種から近代品種まで」塩谷 格、法政大学出版局、2006年
「焼きいもが、好き!」日本いも類研究会 焼きいも研究チーム編集、農文協、2015年
「サツマイモの世界 世界のサツマイモーー新たな食文化のはじまり」山川 理、現代書館、2017年
「令和2年度いも・でん粉に関する資料」農林水産省ホームページ
<ライタープロフィール>
RENA 青森県出身。農学系大学を卒業後、種苗会社、農業ベンチャーを経て現在はフリーとして農業や食に関わる企画や運営、各種サポートを中心に活動中。
(2080字)
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